醜女と呼ばれた姫
「申し訳ありません、父上」
「藤……」
几帳ごしに声がした。そこから顔を覗かせることもなく、若草の姉であり娘の藤が声を発した。
「私が、こんな醜女だったのが悪かったのです。お役に立てず、申し訳ありませぬ」
祝い品を持たせ、姉妹は男のもとへ嫁いだのはよかった。
だが、半年もたたぬうちに姉である藤が離縁されたのである。
この時代、男の立場は大きい。結婚は親が決めることもしばしばである。離縁されたらそれまで。
藤はなくなく父の元へ戻ってきたのだ。家同士のつながりもこの時代、大きな意味をもつゆえに、藤はそういったのだ。