誘惑男子SS~誘惑は甘い罠~
「鍵が開いてたよ。不用心だな」
「篤史、いえ、上田君がすぐに帰ってくると…」
「へぇ。篤史って呼んでるのか。妬けるな」
思わせぶりにニヤリと上がった口角の端が、ドキドキするほど色っぽい。
「かっ、からかわないで下さいっ…」
慌てふためいて背を向けた瞬間、後ろから大きな腕で抱きすくめられた。
「きゃっ」
一気に早まる胸の鼓動を知られたくなくて、認めたくなくて、微かな抵抗を試みる。
「放して…下さい」
「どうして?」
自信たっぷりのバリトンヴォイスが耳元で甘く響く。
「…篤史が、篤史がもう帰ってきます」
「篤史が帰ってくるから?帰ってこなきゃいいのか?」
「そ、れは…」
思わず言葉に詰まる。