逢いたくて
呼吸が落ち着いてぐったりする私の肩を強く抱きながら渉が話しはじめる

「病院を走って飛び出す咲を見つけて追いかけたんだ。なにかあるんじゃないかって。来てよかったよ」


「あの…ね…」

「うん」

「譲が奥さんを…呼んでるの」

「うん」

「だから私が呼んで来ようって…」

「うん」

「譲にしてあげられる最後の…」

「うん」

「最後のことだから…」

涙が溢れる

自分で口に出しながら最後という言葉の重みにつぶれそうになる

「でも…苦しくて…」

「うん」

「どうしたらいいかわからなくて」

「うん」

「なんて言ったらいいか…」

「うん」

「伝えられるか…」

「うん」

「怖いの」

「……うん」

「怖い」

渉は私のことを強く強く抱いた

「咲」

「ん?」

「行こう。一緒に。」

「あり…がとう…」
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