逢いたくて
「譲さんが病気です」

「それも…知ってる。」

「……?」

「膵臓ガン。末期のね…」

「どうして知ってるんですか?」

奥さんは目をそらしてうつむいた

「譲を愛しているからよ。今でも…」

「……」

「私たちは今時めずらしい政略結婚だったことは知ってるわよね?」

「はい」

「でも私ははじめから譲との結婚を望んでいたわ。愛していたから。」

奥さんはそう言って微笑んだ

「父のもとに熱心に勉強しに来ていた彼に心を奪われたの。言うなれば私が仕組んだ結婚よ」

「……」

「私は精一杯彼を愛した。例え彼が振り向いてくれなくても…仕事のための結婚だと知っていても。ただいまって彼が毎日私のもとに帰ってくれるだけで満たされた…」

「……」

「でも彼があなたと出会って本当の愛に目覚めてしまった…。」
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