逢いたくて
会場を目の前にして一瞬足がすくんだ

「いったい何人いるの?」

「今日は1500人くらい」

「へっ?」

「大丈夫。石ころかなにかだと思って」

「……やってみる」

渉に優しく微笑みを向けられて歩きだした

みんながお辞儀していく

ここは妻(まだ妻じゃないけど)としてしっかり振る舞わなきゃ

自分に喝を入れながら愛想笑いを浮かべてなるべく背筋を伸ばし歩いた

渉はシャキッとしていて話し掛けられても相手にしっかりと合わせられていた

慣れてる…

にしても知っている人もいない

慣れてもいない場所

しかも久しぶりにヒールをはいたせいでお腹はかんかんにはって足も痛い

しゃがんでしまいたい

赤ちゃんがんばろうね…

そうお腹に手をやり赤ちゃんに言うと

「すみません。妻が妊娠中でして。すこし休ませたいんですが」

渉はすぐに気づいて話し相手に伝えた

「もちろんどうぞ」

相手の方は私たちより倍は年齢がいっている

今日いる人はほとんどがそう

余計に緊張が高まる

「私大丈夫だから。あっちの椅子に座ってるね。渉は挨拶してきて」

「咲、約束だろ」

とは言っても渉のもとにつぎつぎに挨拶に人がくる

渉が声をかけられているすきに隣を離れて椅子のほうに…

『ドンッ』「きゃっ」

行こうとして人にぶつかり見事に転んでしまった…
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