逢いたくて
車から降りて歩きだし会社に裏から入った

社長室に行くまで何人にも『風邪治った?』とか『熱は?』って声をかけられた

きっと譲がうまく嘘をついてくれたんだ

今はそんな優しさが痛い…

気持ちとは裏腹にあっという間に社長室に着いた

深呼吸をして社長室のドアをノックした

「はい」

その声を聞いただけで涙が出そうになる

「神永です」

震える声で言うとすぐ足音がきこえた

『ガチャ』

譲はドアをあけるとすぐに私の腕を引き社長室に入れた

「咲」

そういって私を強く強くだきしめる

「ごめんな咲。傷つけて…。本当にごめん」

譲の声が震えている…

「いっかいだけなんだ。別れを告げた日、どうしてもと言われていっかいだけ妻と寝た。そしたら妊娠して…。言えなかったのは咲を愛してるから…終わりにできないから…。事実を言えば咲が離れていくとわかったから…ごめん…」

譲に別れを告げに来たのだと心で繰り返した

でないと決心が鈍りそうだから…

「咲…」

譲が体を離して私の目を見る

譲の瞳も揺れていた

そして

「んっ…」

譲は突然唇を重ねた

必死に私は抵抗する

それでも譲は私の唇から離れずむしろ舌を強引に入れてきた

「んっ…ん…」

強引に入った譲の舌は私の中でいつものように優しく甘く動く
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