カサブランカにはなれない
「・・・すごいですね。」
「誰にも言ってない事なんだから内緒だよ。」
「はい。わかりました。」
「ばかにしてんだろ。」
「いえいえ、していませんよ。うらやましいだけです。」
「・・・どうでもいいけどあんた、最近顔色よくないねぇ。どうしたんだい?」
私はそういうことを言ってもらっただけでとても嬉しかった。
「・・えぇ。最近少し調子が良くなくて。でも大丈夫です。
こうやってキヨさんとしゃべっている時だけが心の安らぎですよ。」
キヨさんは、信じられないと言ったような顔をして言った。
「あんたねぇ。若いのにこんなばばあとしゃべっている時が安らぐなんておかしいよ。
せっかく若いんだから、もっと楽しみなさいよ。
もったいないねぇ。すぐにあんたもばばあになるんだよ。
その顔じゃ、ろくにいい人も寄り付かないんだろ。」
「・・・はい。いるはいるんですけど、全く上手くいかなくて。」
「・・・だろうね。だって不幸そうな顔しているよ。そんな顔していちゃだめよ。」
「そうですね。・・・じゃあキヨさんまたね。」
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