カサブランカにはなれない
「次で降りるんですけど。・・・本当に大丈夫ですか?」
「はい。じゃあお気を付けて。」
バスは停留所に着き、止まり、前のドアが開いた。
「じゃあまた。」
と高田はいい、バスを降りて行った。
私は、やっと肩の荷が下りた気がして気が楽になった。
バスが発車し、バスを降りて歩き出していた高田が
窓の下で会釈しているのがふと見え、私は会釈をかえし、ためいきをついた。


翌朝、新聞ラックに新聞を置きに行くといつもの通りキヨさんに遭遇した。
「おはよう、今日は何曜日だい?」
「おはようございます、キヨさん。水曜日ですか?」
「そうだよ。昨日は休みだったんだね。」
「はい。」
キヨさんに、昨日の事は話した方がいいのだろうか。
どうせ高田がキヨさんに私とちゃんと話したという事を報告するに違いない。
高田が報告するのに、私が何もいわないのは不自然だと思われるかもしれない。
何もやましい事はないのだから言った方がいいだろう。
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