カサブランカにはなれない
翌朝、私はいつもの通り、キヨさんと話そうと新聞ラックへ向かった。
しかし、キヨさんはいなかった。
私は一瞬最悪な出来事が頭をよぎった。
私はいそいで、キヨさんの個室へ行ってみた。入り口のドアが半分開いていたので
私はのぞいてみた。キヨさんはグーグー寝息を立てながら寝ていた。
昨日の久しぶりの外出で、かなり疲れたのだろう。私はホッと胸を撫で下ろした。

その週は、寒い日がずっと続いていて、私は体調が悪かった。
この前もらった薬を飲み続け、体調は良くなっていたのだが、今日は
頭が割れるように痛かった。
歯を食いしばって痛みの波が来るたびに耐えていた。
キヨさんには楽しそうにしていて欲しかった。
キヨさんとの会話は自分と家族の不仲を思い出さずにすんだ。
守の事を思い出さずにすんだ。
私にとってキヨさんは精神安定剤だった。
勝手なのは十分承知だが、私はその為だけに仕事に来ていた。
事務所にいても、上司に何か言われたが何を言われたのかわからない。
私は、ただ今日の勤務時間が過ぎるのを待った。

次の日の朝、私はおそるおそる二階に行った。
キヨさんが、いつもの場所で待っていた。
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