カサブランカにはなれない

13.みえないもの

待ち合わせ場所の駅前の柱時計の下に着くと、まだ守は来ていなかった。
あと、五分で七時になる。携帯に電話してみようかと思ったがもう少し
待とうと思い直した。
七時を過ぎ、柱時計の針は七時十五分を回っていた。
私は冷たい風で、体が冷えきって頭がずきずき痛くなってきた。
駅の前に植えられた桜の木はいつのまにか葉っぱが一枚もない。
いつ紅葉が終わっていつ葉っぱが全部落ちたのだろうか。
守とこの前会ったときはどうだっただろうか。
そもそも付き合い始めたのはいつだっただろうか。
私が守と初めて会ったのは大学二年生の冬だ。
守は大学一年生のはじめからそこでバイトしていたので
私の教育係のような感じで一緒にシフトに入る事が多かった。
同じ年ということもあって、すぐに意気投合した。
私は守の事を初めて見たときから気になっていた。
私は守の方も好意をもってくれていることを感じる事ができた。
私は、守に告白をした。
今でも覚えている。その瞬間、守はちょっと困った顔をした。
私は見逃さなかった。守は私と付き合いたいとは思っていなかったのかもしれない。
ちょっと考えた後、守は「・・・いいよ。」と言った。
私は、喜べなかった。それから、こんな関係が続いている。
なんでこんな人と付き合っているのだろうと何度考えただろう。
しかし、一度でも自分が好きになった人だと思うと簡単に終わる事ができない。
単純に、嫌いになる事ができないだけだ。
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