カサブランカにはなれない
私たちは、何度来たかわからないくらいいつも来ているファミリーレストランに
いつものように入った。
私は、体が冷えきっていたので、暑いくらい暖房の効いている店内で
体が一瞬にしてあたたまっていくのを感じた。
いつものとおり、お会計は私が払うのだろう。
「あっおれ、いつものハンバーグでいいや。ゴハン大盛りね。」
守はメニューをちょっと開いてすぐ決めて、卓上の呼び出しボタンを押した。
私は体は温まったものの、寒気がしたので、暖まるものをいそいで探した。
メニューを見ていると店員が来てしまった。
「チーズハンバーグ、ライス大盛りで。あと、ドリンクバーで。」
守は自分の分だけさっさと頼んだ。
「え〜っと・・・温玉鍋焼きうどんと、ドリンクバーもう一つ。」
私は、きのこ鶏雑炊と迷っていてまだ決めていなかったのだが
しょうがなく注文した。


「・・・・。」
私は、急にあたたまった手と足の先がじんじんした。
手の指が赤くなっていた。
私はずっとうつむきながら自分の指を見ていた。
「・・・まだ怒ってんの?」
守はタバコを吸いながら面倒くさそうに私を見た。
私はタバコの煙が大嫌いだ。
匂いをかぐと気持ちが悪くなる。
守はタバコの煙の行く先なんか気にもせず私の目の前へはき出す。
私は煙が目に少し入って顔を守から背けた。
「怒ってないけど。」
守ははっきりしない私の口調と、あからさまに煙を嫌がった態度が
気に入らなかったのか、むっとした顔をした。
私は、その場の空気に耐えかねて二人分のホットコーヒーを取りにいった。
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