カサブランカにはなれない
「・・・別れたいんだけど。」
守はいいにくそうに、だがはっきりとした口調で言った。
私はやはりと思ったが、それでもまだ信じられずにいた。
「・・・ど、どうして?」息がつまりながら私は言った。
「・・・好きな子ができたんだ。俳優養成所の仲間のひとりなんだけど。
っていうか、その子とはもう結構前から付き合っていたんだ。
俺はもうお前とは自然に終わっているものだと思っていたんだけれど、
メールしてくるからはっきり話しておいた方がいいと思ってさ。
彼女にまだ続いてると勘違いされても困るから。」
守はコーヒーを飲みながらこっちを見て言った。
「・・・・そんな。」
「お待たせ致しました。」
私は言葉を続けようと思ったそのとき、注文した料理が来た。
私は店員の方を見上げた。
その店員は無表情で料理をテーブルに置き、注文したものが全てそろったか
私たちに確認した後伝票を置き、素早く去っていった。
私は何を言おうとしたか忘れて黙った。
「・・・ちょっとトイレ。」
私はたまらず、トイレへ立った。
私はトイレのドアを開け、洗面所にうなだれるようにもたれかかった。
私とは別の女が好きと聞かされるなんてと思い、あきれて笑ってしまった。
私は今日こんな男と会う為に胸を躍らせていたのかと思うと可笑しくなってきた。
< 167 / 201 >

この作品をシェア

pagetop