カサブランカにはなれない
なんで私と付き合ったのか。
なぜすぐに私と別れなかったのか。
私のことを好きだったのか。
私のどこがいけなかったのか。
新しい女の子のどこがよかったのか。
今まで私といて一緒にいて楽しかったのか。
今まで言いたいことが言えないことが多かった。
それなのに、もう話すこともできない会うこともできない人になってしまった。
一瞬にして関係が終わってしまった。
本当に他人になってしまった。
目の前の空になったお皿とマグカップを見て、もうここで一緒に食事をすることもなくなったと思うと何だが涙が止まらなくなった。
どこへ行ってしまってもどこで何をしていても、守は私とは別れる気はない
という変な自信があった。
だからそんなに会わない日々が続いても最後は一緒になるものだと勘違いしていた。
所詮、男女の始まりも終わりも言葉を交わしただけのことだった。
私たちが付き合っていたという証拠は今となってはなにもない。
私はなにもかも絶望的に思えた。
小さい頃、父親に言われた言葉を思い出していた。
一度始めたことはやり続けなさいと何度も言われた。
続けていることに意味があるのだと言われ、そう思い込んでいた。
でもそれは間違いだった。
いくら続けていても中身が空っぽではなんの意味もない。
続けているというだけで満足してしまって本質をしっかり見ようとしなかったから
何も残らない。
本当に私と守は何も残っていなかった。
どこかへ連れて行ってもらったことは一度もなかった。
本当に守を好きだったかと考えるとそれすら良く分からなかった。
私はそんなことを約三年の間ずっと続けてきた。そしてそれは意味のあるものだと
思っていた。
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