カサブランカにはなれない
佐田のときもそうだったのだろう。
私は本当の彼を見たことはあっただろうか。見ようとしただろうか。
いつでも私には一番大切なものが見えていなかった。
大切なものをそれほど大切ではないと決めつけていたのだ。
それが相手に伝わり相手は私に嫌気がさす。
現在より未来のことばかりを考えていた。
私は店を出て自分の家へ歩いた。
私はふとキヨさんのことを思い出していた。
私に人生をもっと楽しみなさいと言ってくれた。
今の私は何もかもを楽しんでいない。
それは周りの人にとってもいい迷惑なのだ。

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