カサブランカにはなれない

そのとき、背後から私の両親が現れた。
私は思わず叫んだ。
「おとうさん！！おかあさん！！」
私は子供のように叫んだ。しかし二人には私の声が聞こえなかった。
二人は私をすり抜けるようにして通り過ぎ、寄り添って歩いていく。
まるで、もともと二人だけの家族のようだった。
家族の中に私は存在なんてしなかったように幸せそうだった。
私はいま、どの人達にとっても必要ではない人間なのだ。
それは全て私が原因だ。
私の方から向き合わなかったせいだ。
わかり合おうとしてきた人達をちっともわかろうとしなかったからだ。
思いやりを持って接することを怠けたせいだ。
大切にしていればなくさなかっただろうものだ。
自分のことと同じように大切にすべき人達だったのに
それを自分から突き放していた。