カサブランカにはなれない
「・・・うん。」
私は泣きそうになった。
夢に出てきた母親とは違った顔をしていた。
今まで見た中で一番優しい顔をしているように思えた。
私は水を飲み干し、二階へ戻った。
ベッドに横になり、体温計で熱を測ってみた。
三十七度二分だった。
それでも最近では一番体調が良い方だった。
あれだけ寝たおかげで頭の痛みも消え、すっきりしていた。
私は携帯を見た。
着信が三件あった。
一瞬どきっとした。守だろうか。おそるおそるボタンを押して着信履歴を見ると
三件とも職場からだった。
でもなぜか、それほどがっかりしなかった。これでいいのだ。
これですっきりした。守との別れは夢なんかじゃなく現実だ。
私は、アドレス帳のボタンを押し、「林 守」を表示した。
私はすぐに削除をした。
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