カサブランカにはなれない
私と詩織と佐田は、同じ大学の同じサークルだった。
佐田は誰とでも気軽にしゃべることができるタイプだった。
私と詩織は周りにとけ込めずにいたが、佐田だけは私たちの顔を見るたびに
話しかけてきた。
そしてだんだん仲良くなっていった。
私たちは三人で飲みにいったりカラオケに行くようになった。
私は、佐田のことを何とも思っていなかった。
しかし三人で出かけるたびに、詩織の佐田に対する態度の変化が気になっていった。
詩織の目線から佐田への好意を感じた。
だんだん自分の心の中に、嫉妬のような感情が芽生え始めていた。
佐田の方は私たち二人共に何の恋愛感情も抱いていなかった。
それは明らかだった。
そして、急に佐田は私に告白をしてきた。
私は優越感を感じ、得意になっていた。
涼しい顔をして詩織にどうしようかと相談をした。
その時、詩織は冷静に言った。
「・・・きいは、佐田のこと好きなの?」と。
私は、自分の心を見透かされたような気がして嫌な気分がした。
「・・・ううん。でも他に好きな人いないからいいかなと思って。」
私は、詩織の顔を見て言った。
「・・・そっか。いいんじゃない?」
詩織はうつむいた。
「でも三人で遊ぶことが少なくなっちゃうね〜。」
私は心の中では勝ち誇った気でいた。
< 181 / 201 >

この作品をシェア

pagetop