カサブランカにはなれない
その日はショックで仕事にならなかった。
私は、元気だったキヨさんのことを思い出していた。
ある日突然いなくなるなんて考えてもいなかった。
私は昨日休まなかったら話ができたかもしれないのにと後悔した。
もうキヨさんと会えないと思うと、明日から仕事に来たくなくなった。
私は、仕事場をいつもの時間に出てバス停へと歩いた。
バスが来て乗り込もうとしたそのとき、高田が走ってきた。
私は軽く会釈をして、先にバスに乗り座席に座った。
高田はいそいで乗り込んで、私の隣に座った。
高田は息があがっていた。
「この間はどうも。」
「・・・おつかれさまです。」
私は、高田と目を合わさずに言った。
「今日はバスなんですね。」
「うん。自転車の鍵見つからなくて。たぶん部屋にあるんだけどね。」
「・・・そうなんですか。」
私は笑っていった。
「キヨさん、残念だったね。あんなに元気だったのに・・・」
高田は言った。
「はい。びっくりしました。」
「昨日の夕方、入院して今日の朝早くに亡くなったらしいよ。
俺も昨日休みだったから知らなかったんだけど。
今日行ったらいなくなっていたからびっくりした。」
「・・・そうだったのですか。」
私は、バスの揺れで頭がぐらぐら揺らされている感じがして気持ちが悪くなった。
「大丈夫ですか??」
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