カサブランカにはなれない
高田の声が遠くで響いているように聞こえた。
「・・・はい。」
私は答えた。
「俺、次で降りるんですけど・・・。
一緒におりましょう。立てますか?ちょっと腕失礼します。」
高田はぐっと私の腕をつかみ、バスを降りた。
バスは私たちを降ろすとすぐに行ってしまった。
「・・・だいじょうぶ?この前も気分悪そうだったよね。
 バス通勤なのに毎日大丈夫なの?」
高田は、お年寄りに付き添って歩くように私を支えながら歩いた。
「・・・すいません。最近調子が悪くて。」
私は意識がもうろうとしながらどうにか自分の力で立って一歩一歩歩いた。

「・・・もうすぐそこがうちなんで、休んでいってください。」
高田は、目の前に見える三階建てのアパートを見ながら言った。
「・・・すみません。」

高田は私を支えながらバッグから部屋の鍵を取り出し、一階の自分の部屋の
ドアを開け、私の靴を脱がした後自分の靴を脱ぎ部屋に入った。
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