カサブランカにはなれない
「・・・こんなときに介護の仕事が役に立つなんてね。」
高田はちょっと笑っていった。
「・・・すみません。」
私はここまでしてもらって申し訳なく思った。
自分の部屋に帰ってきたような感覚になって、安心してしまったのか
私は気を失ってしまった。

目が覚めると、いつもとは違う天井の模様が目に入ってきた。
私は高田の部屋にいることを思い出した。
ベッドに横たわりながらなぜ自分がここで寝ているのか思い出そうとした。
玄関に入ったことは覚えていたがそれから先は覚えていなかった。
周りをみまわすと、ベッドの隣に小さいこたつがあって
そこには水の入ったコップとみかんが一つ置いてあった。
玄関の左側にキッチンが見え、そこに高田が背を向けて立っていた。
玄関の右側にはユニットバスがあり、その横には洗濯機があった。
部屋は1Kで私のいる部屋は八畳くらいの広さだった。
テレビやMDコンポが置いてあり、男性の部屋にしてはきれいに
片づいているという印象だった。
ものが極端に少なく、さっぱりした部屋だった。
「・・・あの。す、すみません。」
私はそこまで親しくないのによくしてもらってとてもすまない気持ちだった。
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