カサブランカにはなれない
「・・・あ、気がついた?よかった。
 もう少し気づかないようだったらうちの病院に電話してみようかと思っていたんだけど。気分はどう?」
高田は、リンゴをむいていた。
「・・・あっもう大丈夫です。すみませんでした。」
私は立ち上がろうとしておき上がったがふらふらしてしまってベッドの上に
座り込んだ。
「まだ寝てていいよ。
ここ、狭いでしょ。病院の寮なんだ。安く住めるから文句言えないんだけどね。
寮ここの他に施設から歩いてすぐにところにもう一つあるんだけどね。そっちがよかったんだけど空きがなくて。ここしかあいてなかったからしょうがないけど。」

私は床に転がっていた目覚まし時計を見た。
夜の八時を過ぎていた。バスに乗ったのがいつもの時間のバスで六時十分だったからここに来て一時間以上経っている。
「・・・すみません、こんなに遅くまでお邪魔してしまって。」
「何もすることないし大丈夫だよ。それに、キヨさんから伝言預かっていたから
話したいと思っていたところだったんだ。」
高田は皮をむいたリンゴを皿に乗せてこちらに持ってきた。
「・・・そうですか。」
私はベッドから出て、こたつの方へ座った。
高田は、私の向かいに座った。
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