カサブランカにはなれない
こんなこと、よく知りもしない人に言われたくないだろうけど。
渡辺さんもいろいろあるだろうけど、元気出してがんばって欲しい。
一人じゃないんだよきっと。キヨさんが渡辺さんのことを心配していたみたいに
必要としてくれている人は必ずいるんだと思うよ。」
高田は私の目を見て言った。
「・・・はい。」
私は泣き出してしまった。
よく分からない感情が溢れてきた。
こらえても声が出てしまうほど泣いて顔が熱くなっていた。
私はずっと自信がなかった。
今までずっと自分が誰かに必要とされている気がしなかった。
でも、自分が思うほどそうでもないと思えた。
それでも、いつもと変わらず思い悩んで毎日を過ごすだろう。
だけど、ちょっとは明るくなれる気がした。
でも、涙が止まらなかった。
高田は、すごく慌てた様子でボックスティッシュを私の目の前に置いた。

「・・・す、すみません。」
私は高田の困った様子は目に入らなかった。
ティッシュで涙を拭き、鼻を押さえた。
「お腹すいたね。うどんでいっか。食べていってよ。どうせ一人だから。」
高田は、立ち上がってキッチンの方へ行った。
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