カサブランカにはなれない

私はだんだん落ち着きを取り戻してきた。
それでも涙があふれてきて、呼吸が上手くできなかった。
泣きすぎて体力がなくなって、だるくなってきた。
私は腫れて半分くらいしか開かない目をこすりながら、
台所に立っている高田を見た。
キヨさんは高田に思いを伝えたのだろうか。
言わなかったとしたら、永遠にキヨさんの思いは私の胸に閉まっておこう。

高田は、土鍋の沸騰したお湯の中にうどんを三玉入れた。その後、長ネギと白菜を切っていれ、そばつゆを入れ最後に溶き卵を流し入れた。

「できたよ〜。」
高田は鍋つかみを使って土鍋を持ってきた。
「あっ鍋敷き忘れた！ちょっと持ってきてくれない！？」
「は、はい。」
私はあわてて立ち上がり、台所の流しの上の台に立てかけてあった鍋敷きを
見つけていそいでこたつの上に置いた。
「ありがとう。やばい、熱かった。」
高田は鍋をがちゃんと置いた。
土鍋のふたを開けると、ぐつぐつと湯気が上げってきた。
高田はさいばしにおたま、取り皿とはしとコップに入ったお茶を持ってきた。
「すみません。」
「いいよ。じゃあいただきます。」