カサブランカにはなれない
うちの父親は、公務員だった。
高卒だったので、18歳からずっと市役所勤めだ。
だから、小さい頃から言われ続けていた。一回始めた事は絶対にやめるなと。
さすがに一回も途中で投げ出した事がない訳ではなかった。
ピアノだってスイミングだって途中でやめてしまった。しかしその言葉が、辞めようかなと思った時にその都度呪文のように私の頭の中を駆け巡って洗脳しているのかもしれない。
それでも辞めてしまうのは、本当に自分には縁のなかったものだったんだといまとなっては思う。

私の職場は、その周辺では有名な大きな総合病院だった。
私はそこの総務部に入職した。
面接に行った時はそういう話だった。
しかし、入ってみるとどんどんと奥の方へ連れて行かれるので
私はどこにいくのだろうと不安になった。
私は、外来の大きな窓口のある病院の方ではなく、
その病院の附属の老人ホームの総務部に入れられる事になっていた。
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