カサブランカにはなれない
私は職場に慣れて、仕事を一通り覚えると、相馬さんの事も面白いと思えてきた。
最初は、何もかも初めての事で全く自信がなかった。
自分の事だけでいっぱいいっぱいで周りが見えなかった。
しかし、いろいろ見えてきてわかったことはたくさんあった。
自分のやっている事は、ひとつの大きな組織のほんの一部分であること。
それぞれの分野でそれぞれの役割があってそれを毎日こなしているということ。
それぞれ、違う分野であっても繋がっている部分はあってバランスが必要な事。
どこかでバランスが崩れるとそれを総務が補うと承知してしまう上司に対して相馬さんが激怒していた事を今になって理解できる。

この施設が新設された時から働いている相馬さんはいつもいう。
「渡辺さんは知らないだろうけど、最初は事務だけだったんだよ。
それなのに今は添乗もやらなきゃいけないんだから。これは私たちの仕事じゃないのに。これ以上人の仕事やってあげなくちゃいけないなんて耐えられない。」
確かにその通りだが、そんなに目をつりあげて言わなくても良いのにといつも思っていた。
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