さよならまた逢う日まで
これは幼稚園入園か…



スモックのボタンが一つしかとまっていない俺、その手をつなぐ母ちゃん。


せっかくセットした髪は乱れその場の状況を想像させる。


小学校入学。


幼稚園とさほど変わらず…やっぱり母ちゃんの髪は乱れていた。


中学入学。


多少この頃になって動物のように本能では動かなくなってきた。


しかし母ちゃん曰く、世間なんかに背を向け不良漫画に感化されたような眼差しで写る俺。


走馬灯って…結婚式で流すあれみたいだったんだな…普通に感心。


まだ途中経過の高校生活。


これはいい画像がなく走馬灯には間に合わなかった。



…っていうか!オイオイオ~~~イ!!
なんで今俺は走馬灯を見ているんだ!

って走馬灯の編集間に合ってないし!!


母ちゃんにできないって答えを出されたあんときの夢、こんな形で叶えるとは…。


多分生身の人間じゃ絶対無理な距離を俺は飛んだ。


30メートルは軽くいったな…。


アスファルトに漂う陽炎を掻き分け鈍い音とともに俺は物のように落下した。


俺だけ時間が止まりその場に佇んだ。


そんな事などお構いなしにシーンは進んでいった。


地方から来た長距離トラックが路肩に乗り上げ停車していた。

運転手は40代半ばくらいかな…変な話他人事のように同情してしまった。


運が悪かったよおっさん…。
年恰好からして俺みたいな娘か息子がいるんだろうな。

金かかるんだよなこの時期…。


そんな事を考えている間に救急車が到着した。
慣れた無駄のない動きで救急救命士が血みどろの俺をストレッチャーに乗せた。


野次馬を掻き分け救急車は発車した。




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