さよならまた逢う日まで
教室では越野が出席をとっていた。

 
前から堂々とガブリエルが入っていった。

 
「おっ!神田~2日目にして遅刻か?うん。 ここは日本だからな~うん。

時間は守れ~うん。 

そして・・・草野~。お前も海外から帰ったばかりで日本の決まりがわからんか~うん。」
 

教室にドッと笑いが起こった。 


そんな中藤田にふと目をやると・・・・奴は笑ってなかった。


何かを疑う眼差しで首をかしげていた。


「突っ込むな・・・・」俺はまた目で訴えた。

 

授業は聞き流した。

 

時間がない俺にとって、何が必要か取捨選択したら、勉強を一番最初に捨てた。


受験をしない俺にとっては必要のないものだ。

 
午前中の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、一気に教室は騒がしくなった。

 

弁当をもってきていない俺は、今日もおばちゃんのパンを買いに教室を出た。

 
昨日は隣の教室から黒田が転がり出てきた


が、今日は出てこない。

教室を覗くと、昨日まで黒田弄んでいた加藤達のターゲットが変わっていた。


勉強が出来そうな、青白く細長い感じの奴が囲まれていた。


奴はきっと次は自分だと悟っていたのだろう。


チラチラ気にしながらも、関わりたくないと、我関せずを決め込む他の奴らの胸の中でも、次は自分かもしれない恐怖が見え隠れしているようだった。
 
 
階段を下り、昇降口にはもう列ができていた。


その最後尾に並び、少しずつ進む流れに従った。

 
「草野くん。」

 
思いがけない声に振り向くと、少し下げた目線の先に堺が立っていた。

 
「あっ・・・・ども。」


その声と同時にまた俺の心臓がビートを刻みだした。
 

「お昼?」

 
堺が見上げるようにして話しかけてきた。

 
「あっ・・・うん。弁当忘れて・・。」

 
「ここのパンおいしいよね。特に玉子パン好きだな。」

 
おばちゃんのパン屋の顔は“コロッケパンと焼きそばパン”だ。


それじゃなく“玉子パン”が好きっていう堺に、とってつけたようだが、ブレない真っ直ぐさを感じてしまった。

 

「・・・・好き?」

 

ドーン!心臓がストレートパンチを食らいダメージを受けた。

 
「えっ?!」
 

「草野くんは何パンが好き?」

 

・・・・だよな・・・。


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