さよならまた逢う日まで
啓太は以前の俺のようにほとんど自分の意思がなく、ぼんやりと過ごしていた。



そんなあいつが昨日を境に生まれ変わったかのようにまた人の心を動かしていった。

嬉しい半分、またくだらない嫉妬が俺の心に染み込んできていた。




「啓太~放課後ちょっとつきあってくんね?」


神田としゃべっているところを手招きして呼び用件を告げた。



「どうせ暇だべ?」


「あ~いいけど」


啓太は神田としゃべって大笑いした表情のまま答えた。



啓太と待ち合わせた30分前に俺は堺を呼び出していた。

 

人影のなくなったグランドで堺は待っていた。


オレンジ色に染まった空に、堺の姿はシルエットのようにぼんやり吸い込まれそうになっていた。

 

「ども。」

 

「あっどうも。」


堺も同じように頭を下げた。
 

「俺のこと知ってる?」


声じゃなく口から心臓が飛び出るかと思った。

 
「あっうん。サッカー部の桜井くん。」

 

堺も少し緊張した声で答えた。


って言うか存在が分かってもらえていた。
 

それだけで十分だそこで終わりにしたい・・・・。


でもだめだ、そうじゃない、今日の目的はそこで終わっちゃいけない。

 

一瞬の沈黙が何時間にも思えた。



「あ~あの~え~っとおっ俺~ずっずっと堺さんのことが好きでした。


・・・・あ~もしよかったら・・・・付き合ってください。


・・・ってか突然でごめん。」


唐突に切り出してしまった。

 

ところどころ声が上ずってこんな時の心境を「穴があったら入りたい」っていうのだろう。いや、緊張のあまりその場で穴を掘りだしたい程だった。

 

俺が話している間ずっと目を見て聞いていてくれた堺が、目を逸らし一瞬の間があいた。
 


その間が永遠のように思えた。

 

「ごめんなさい。・・・・・私、ずっと好きな人がいるから・・・本当にごめんなさい。」

 


堺は深々と頭を下げた。
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