さよならまた逢う日まで
見渡すとあたりはすっかり暗くなり湿気を帯びた空気がまとわりついて来た。


誰もいないグランドに自分の足音が響いた。


キーッ。


通り過ぎようとした部室の扉が開きお互いに驚いて止まった。


「あっ。お疲れさま」



最初に声をかけたのは堺だった。



「お疲れ…遅くまで走ってんだな。」


「うん。草野くんもまた始めたんだね」堺は先を歩き言った。



「部活?あ…桜井が人数足りないから出てこいってうるさくて。夏休み何もやることもないし…。」



なぜか戸惑い返事に慌てた。


「夏の夜の匂いがするね。」



立ち止まり真上を見上げ堺が言った。



「夏の匂い?」


同じように真上を見上げそっと空気を吸い込んだ。



「頑張って…草野くん。」



ぼやけた星空を見上げながら聞こえてきた。



「私も頑張るから。」



声の方を振り向くと堺と目があった。



表情を薄暗くはっきりとは見えず、堺はまた先を歩いた。



自分の動揺に気づかれないことを祈った。



返事をする余裕もなかった。



ただの激励?




頭が混乱している間に堺がどんどん先を歩いていく。



慌てて走り寄りすぐ後ろを歩いた。


「草野くん自転車だよね?」



そう言って自転車小屋の方へ進んだ。





自転車はポツンと俺を待っていた。










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