さよならまた逢う日まで
「堺は?」



「私は歩き。」


「家・・・・近いの?」



「ううん。青葉台」


電車で二駅の場所だった。


「駅…駅まで送るよ」



よく言った!と自分を褒めた。



「うん。」


堺はうなずきまた先を歩いた。


先を行く堺の後ろを俺は自転車を引いて歩いた。


部活の話をお互いにポツリポツリと質問し合いながら賑やかな商店街に差し掛かった。



俺の鼓動が聞こえるんじゃないかと後ろを歩いていたので商店街の喧騒にホッとした。



前を歩く堺が足を止め俺は堺の横に並んだ。



堺の見つめる先にそれは貼り付けてあった。



「今年もこの季節なんだね。」



「あっ…うん」




「堺に告ってさ~一緒に花火大会行かね?」



桜井の言葉を思い出した。


…告って…


鼓動が余計に高鳴りだし俺は俯いた。



「さっ堺…その日予定あるの?」



完全に上ずった声で吐き出すように聞いた。



左下に視線を下ろすと堺と目が合い、俺の心臓にストレートのパンチが入った。



「えっ?ないよ…。」


初めて見た。いつも冷静なイメージの堺が赤くなって俯いた。


この時点で倒れてはダメだ。まだ勝負もしていない。


確認しただけだ。


その次が肝心なんだ。


いけよ!俺!



「花火大会…。」



後ろから声が近づいて来るのでその先が言い出せず、声が通り過ぎるのを待った。



部活帰りの他校の生徒が通り過ぎていった。



仕切り直す。



「花火大会、一緒にいこう…か?」



この一言だけで疲労困憊だ。


どんだけチキンなんだ俺。




「行こうか。」



堺は照れながら俯いた。




完全ノックアウト。立っているのが精一杯だった。



改札を通り振り向く堺にだらしなく手を振り



見えなくなった途端一気にふらついた。


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