さよならまた逢う日まで
光の先は、期待を裏切らず大きな川が流れていた。


これが、三途の川か。


しかし、意外に花畑で囲まれた美しい風景ではなく、普通の川沿いの風景だった。

ただ普通じゃないのは、上流を目指し白い服を着た、いわゆる死者が歩いている事が、ここはあの世だという事を示していた。

白い服というだけで、着ている物はそれぞれ違っていた。

着物だったり、スーツだったり、ワンピースだったり。

俺はというと、白地に黒でYOSHIDA.FCと書かれたユニフォームを着ていた。

それが、俺の人生を象徴する服装だという事か。

俺と一緒に同じ方向に向かう人達は、服装と一緒で様々だった。


老人だったり若者だったり。


生まれたばかりで死んでしまった赤ん坊は、羽が生え羽ばたいていた。

みんな死んだんだ・・・・。


他人事のように俺は周りをキョロキョロ見渡した。


進んでいた行列はその先で進まなくなった。


こっからはちょっと待たされそうだな…俺も歩みを止めた。

「何だよ!ダラダラ待たせんじゃねぇ!!」

舌打ちとともに怒鳴り散らす方を見ると、肩パットがガッツリはいったスーツを着た男が、イライラと貧乏ゆすりをしていた。

多分口の中には入っていないだろうが、癖のようにクチャクチャとガムを噛んでいるように、常に口が動いていた。

…こいつは絶対殺されたに違いない。


心の中つぶやきが聞こえたら絶対ぶっ飛ばされる。


俺は男に背を向けた。


「聞いたところによると、神さんが世代交代をしたんだとよ」


男に背を向け、向き直った方向に恰幅のいい大工のような初老の男が立っていた。


…っていうかどこ情報だよ。


「世代交代っすか?」俺はその男に話しかけた。


「あの世の審査室を息子に任せたらしい。その息子っていうのが、まだまだ半人前らしくて、この通り滞っちまうらしいんだよ。」

…だからその情報どこで仕入れたんだよあんた!


「半人前ね…。」


なんかあの世じゃないみたいな話題だ。





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