さよならまた逢う日まで
堺の姿が消えた改札を俺はしばらくぼんやり眺めていた。


確実に進んでいた毎日を、確実に進んでいた時間を忘れていた。





8月28日




それは俺が終わった日であり、始まった日でもあった。



そしてまた終わりがやってくる。





音も映像も何も入らない時間が途切れ気が付くと俺はここに来ていた。



夜の風に揺れ楠が葉を揺らし佇んでいた。



一か所だけ光が漏れた部屋を確認しインターフォンを押した。



しばらくしてきしんだ音をたてドア開いた。





「何?神頼みに来たか?」



のぞき出た奴は左の口角をあげ不敵に笑った。


「神田わりぃこんな時間に…ちょっといい?」



サンダルを引っかけガブリエルはドアから出てきた。



「そこ座る?」



ガブリエルの指さす先に古ぼけたベンチがあった。



風に揺れる葉の音が不規則に続いた。




高台のこの家からは町が見下ろせた。




ところどころの家から営みの灯りが漏れていた。




「昔…じいちゃんが死んだ時、もう会えないことがものすごく辛かった。


俺のことかわいがってくれて、俺が話すこと何でも「さすが啓太だ」って聞いてくれてさ。


・・・・大切な人が死ぬことほど辛いことはないってその時思った。


でも大切な人を残して死んでしまうこともかなり辛いことなんだな。


初めて知ったよ。


でも不思議なもんだな、俺が死ぬことで悲しまないで欲しいって思うんだよな。

俺のことなんて忘れて早く笑顔になって欲しいって、そんな風に思うんだよな。」



ガブリエルは黙って聞いていた。


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