さよならまた逢う日まで
死ぬ前俺はこんなに誰かに影響を与えられていただろうか。


きっと自分さえ見失っていたかもしれない。



黒ケンのまっすぐなまなざしに俺は留めておこうとした思いを吐き出した。



「探してほしい人がいるんだ。」


俺はいえる範囲で黒ケンに親父の情報を伝えた。



「嬉しいよ!僕が草野くんの役に立てるんだから!」


手がかりが銚子の消印しかない、そんな状況にも関わらず黒ケンは胸を張って応じた。


「それから…遅くても8月28日にまでに見つけてもらえたら…そこまで見つからない時は諦めるから無理しなくていいから。」


そう俺には期限があった。


期限が切れて見つかったところで親父に何も聞けないし伝えることもできない。


できる限り頑張るよと言い残し黒ケンは去っていった。


限られた時間親父をどうやって探そうかと目の前が閉ざされた状況だった。


だから黒ケンに救われた。


見つかることが目的だけど、難しい条件だから多くは期待できない。


でも進まないよりましだ。



そう進まなければ。



俺は黒ケンを見送り再び自転車を走らせた。


校庭では午後の練習が始まっていた。


「わりぃ~遅くなった。」


今はこれに集中する。その思いで練習の中に加わりダッシュを繰り返した。


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