さよならまた逢う日まで
生きていたら半日くらいの時間が経っただろうか

かなりの時間待たされた。

チマチマと行列は進み、ようやく俺の前に「審査室」と書かれたドアがあらわれた。


「失礼しま~す」


俺は中腰の姿勢で「審査室」とやらに入った。

そこは驚くほどシンプルな空間で、長テーブルにパイプ椅子という何とも現実的なセットが待っていた。


「ど~ぞ」


長テーブルの向うには若い男が座っていた。


サラサラした黒髪は、見方によっちゃ「ゲゲゲの鬼太郎」を思わせ、黒髪の間から覗く黒目がちな目は、かったるそうに俺を上目づかいで見上げた。

頬杖をつきながらその男は俺の座る場所を顎で知らせた。

「生きている時の名前は?」


「草野 啓太っす」


「生きている時の年は?」


「17歳っす」


「生きている時の住所は?」


と全部に「生きている時」と最初につく質問は100近く交わされた。

その間男は時々襟足をクリクリと弄りまわし、その動きが気になってしょうがない…かなりウザイ。

「ふ~~ん交通事故ね」と書類をめくったり戻したりを繰り返し、面倒くさそうにハンコに手を伸ばした。


「別にこれといって悪い事もしてないし、普通っちゃ普通だし…あの世行でいいかな」


独り言なのか、こっちに向けて言っているのか、ブツブツ言いながらそいつは書類にハンコを押そうとした。

「…ちょっと待てよ!!何だよ今の決め方!そんな簡単でいいのかよ人の人生!

今ので俺の何がわかったっていうんだよ!

だいたいな!今回のこと自体俺は納得いってねぇんだよ!」

俺は、そのふざけた男の胸ぐらを掴んで迫った。

「勝手にあの世に送られて、散々待たされた挙句にたいしたことねぇ人生だって?!


ふざけんじゃねぇ~よ!!!」




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