さよならまた逢う日まで
「俺は堺が好きだ。お前になんか絶対負けないくらい好きだ。ダメだった時何が一番辛かったっていったら、まっすぐ自分を信じて走り続ける堺を見てると自分が惨めだった。


小さいことで燻って俺は自分自身を全く信じれてなかった。


それを思い知らされるようで辛かった。


でもこれじゃダメなんだって自分を一番励ましてくれたのも堺だったのかもしれない。


だからもう一度ここに戻って来ようと思った。


誰がどうとかそんなの関係なく、自分を信じて次の試合に向かいたい。


そしたら、ちゃんと伝える。」


「そうだよ。何が消えてなくなるだよ。」


桜井が鼻で笑い呆れたように後ろを向いた。


「もし、堺が俺の気持ちに答えてくれたとして…。


その後に俺に何かあった時、そん時お前堺を守ってくれるか?」


「は?意味わかんねぇんだけど?なんで俺なんだよ?そして何かあったらってどういうこと?悲しませる前提みたいでちょっと納得いかないんだけど。」


桜井の口調がいらついてきていることが分かった。


「そんな頼りねぇ思いならお前になんか堺を譲んねぇぞ!」


胸倉を掴み立たされた。桜井の目は真剣だった。


その思いにホッとするとともに、どうにもならない悔しさがこみ上げてきた。


「お前に何がわかるんだよ!お前になんか渡さねぇ!」


ドサッ!


嫌な感触と共に鈍い音をたて桜井が倒れた。


「痛てぇな~!俺がどんな思いで身を引いたと思ってんだよ!何もかもお前には勝てねぇ、憎たらしいったらありゃしね~よ!でもしょうがないだろ!堺が見ているのはお前なんだよ。俺じゃね~んだよ!このくそったれが!!」


一瞬視界が大きくずれ衝撃が頬を貫いた。


転がり、見上げた空は薄暗く夜空へと様を変えようとしていた。


大の字に横たわる俺の横に桜井も転がり、お互い激しく高鳴る鼓動と呼吸を収めようと黙った。












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