さよならまた逢う日まで
「キャー!!!」


ガブリエルが見えたくなったと同時に叫び声と人々のざわめきにで我に返った。


中央車線を遮るように斜めに止まったトラックの先には男が横たわっていた。


「隼人!!!」


狂ったような女の人の声に振り返ると、車道に飛び出そうとする体を引き止められる母親らしき女の人が叫び続けていた。


その時野次馬の人ごみの中微かな声が聞こえた。


「ママ…ママ…。」



泣きながら微かな声が母親を呼んでいた。



覆い被さる男の腕の中で、5歳ぐらいの少年が泣いていた。



その数分後に人ごみを掻き分け救急車が到着した。


少年は男の腕の中から引き出されストレッチャーに乗せられると母親は無我夢中で駆け寄り、涙ながらに少年を抱きしめ、命を確認していた。



その後別のストレッチャーで運ばれる男の顔に見覚えがあった。



「何だよ!ダラダラ待たせんじゃねぇよ!!」


その男はあの日、俺の後ろであの世への列に並んでいたチンピラ風の男だった。



勝手な印象で殺されたと思っていたその男は、自分の命と引き換えに小さな命を救っていた。



あの時思ったことを謝罪したい気持ちでいっぱいになった。





人の人生なんて誰かに評価されるものではない、自分自身がどう生きたかだ。



もう助からないその男の命に俺は深く頭を下げた。



「ゲームオーバーはお前が決めていいよ」


さっき聞いたガブリエルの言葉を思い出し、俺はその場を離れ歩き出した。


「まだゲームオーバーにできない。」


そうつぶやき俺は走り出した。


ドーン


薄暗くなった空に1発目の花火が上がった。






< 69 / 73 >

この作品をシェア

pagetop