さよならまた逢う日まで
第１章
「…た…啓太！！遅れるわよ！起きなさい！」



遠くの方で誰かが呼んでいる…。


引き戸が勢いよく開き、その勢いで少し閉まりかけた。

「あんた！いい加減に起こされなくても起きなさい！母さんだって忙しいのよ！ホラ！起きるっ！！」

無理やりタオルを剥された俺は、うつ伏せから仰向けに転がった。

…しかし怪力だ。


「学校始まるわよ！全くもう！さっさと起きなさい」

ブツブツ言いながら母ちゃんは窓の外へタオルケットをバタバタさせた。

いつもと変わらず忙しそうに動き回る後姿を俺は食い入るように見つめていた。


「何見てんのよ…何かついてる？おにぎり食べたから海苔でもついているかしら」

母ちゃんは部屋の入口に掛けてある、顔の中央しか映らない鏡を覗きこんだ。


「啓太…あんた…バカよ」


夕暮れの薄暗い部屋でぼんやりと呟く母ちゃんを思い出した。


「もう何？！ぼやっとしてしてないで起きなさい！」


怒鳴りながら母ちゃんは部屋を出て行った。


「生き返ったんだ…。」


布団の上で大の字になり俺はつぶやいた。


っていうか…夢だったのか？


顔を洗い鏡に映る自分に問いかけた。


「夢なのか？」


あの出来事があり、その後が目覚めから始まっている。

夢としか思えない…。




俺はとりあえず学校に向かうことにした。


「少しは急ぎなさい！」


ドア閉める間際、台所の方から母ちゃんの声が微かに聞こえた。
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