未熟者の傷跡
ただ単純に、芹川さんの扇いでた風が俺の顔に届いてただけだったんだ。
わざわざ俺の顔を扇いでくれたトコに、芹川さんの優しさが滲み出ていた。
「堀越君、日本史得意?」
「う〜ん、まぁまぁかな?好きではあるよ、文化とか。芹川さんは?」
「あ〜、あたしも嫌いじゃないって感じかな。」
考えてみれば、芹川さんとマトモに喋ったのは、この時が初めてだった気がする。
俺はこのクラスでは一部の女子以外――――と言うか、殆どの女子と喋った事が無かったので、芹川さんのイメージは「コイツ、喋りやすいなぁ。」だった。
彼女の気さくさと優しさ、悪戯っぽさからくる可愛さに俺が惚れてしまうのは、まだまだ先の話。
.