未熟者の傷跡
「堀越君♪」
何か楽しそうな藍川さんの声がして、俺は嫌な予感がした。
恐らく何か面白がってる。恐らく俺の派手にクセがついた前髪。
俺はいかにも「頑張って手でクセ直してます!」を演出すべく、前髪を引っ張る。
…実際、これで直ってくれたら文句言わない。
「堀越君?」
「何?」
俺は後ろを振り返らずに聞いた。
どうか俺の予感が外れていますように。
「こっち向いて。」
「何で?」
「いや…堀越君がカッコ良いから?」
…お嬢さん、語尾が疑問系ですよ?
しかもコレは、ただの罠だっ。
「いやいや、俺なんかカッコ良くないし。むしろ藍川さん、超美人だし。」
…恥を曝すのを避けれるなら、物事は多少大袈裟でも大丈夫たぶん。
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