君とベンチで…
「……あ!」
昨日のベンチを思い出した。
「居場所、分かるかも!」
「本当?」
「うん!行ってくる!」
教室を飛び出した。
はっちゃんは呆れて笑っていた。
A棟を走り抜けて
B棟も走り抜けた。
あの木の奥…
走りすぎて胸が苦しいけど
頑張って走った。
木々を抜けて広い場所へ出た。
ベンチは、そこにあった。
だけど肝心の先生がいないよ…。
「あーあ…今日はいないのかなぁ…」
ため息をついてベンチへ腰かけた。
校舎に囲まれていて、
ここからは校舎によって切りっとられた
小さな四角形でしか空は見えない。
暗くてじめじめした場所。
先生はなんでここに来るんだろう?
なにか理由があるのかな?
もう、今日は会えないのかな…?
「おーい!こんな所で何してる?」
声がした方を振り向くと
待ち焦がれていた先生の姿があった。
「先生!」
ベンチからぴょんっと飛び降りて先生へ駆け寄った。
「田中か、どうした?」
「名前覚えてくれてるんですか?」
「この間、教科書届けさせられたからな」
「あ…あの時はお世話になりました!」
先生はまた笑うとベンチに座った。
隣に座りたいけど、そんなことできないよ…
「座んないの?」
「い!いいんですか?!」
「うん、おいで」
手招きして私を呼んでくれた。
「失礼します!」
勢いよく隣へ座った。