死神の嘲笑
「しかし、この世界にはルールというものが存在します。死神の寿命が三十年、と定められているように。死神に連れて来られた人々に課せられたルールとは、どのようなものだと思いますか?」

分からない、というように梓は首を傾げる。

「その死神の旅立ちと共に、この地を去らなければいけない、というルールです」

「つまり、あと一週間で健太は『無』の世界へ?」

雨に打たれて震える子猫みたいに、弱々しい様子の梓を安心させるためか、死神は顔に笑みを貼り付ける。

「私とは別世界へ、旅立ちます。死神版『無』の世界と、人間版『無』の世界、と表現すれば良いのでしょうか」

「そんな……」

ずるずると扉に背をつけて、梓は崩れ落ちた。

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