死神の嘲笑
「私が命を奪っていった人々は、自分がもう現世に戻れないことを悟ります。だから、現世での出来事を憶えていても虚しいだけだから忘れよう、と別のことに励むんです」

「健太の場合はそれが玉乗りだったんですね」

「はい」

死神はそこで、呟くように言った。


「現世での『記憶を消すために』別の何かで気を紛らわすんです。それで、頭を一杯にして、記憶を追い出してしまいます」

「け、んた……」

誰も、言葉を発することができなかった。

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