死神の嘲笑
「矢口さん、新しいビーチボールですよ」

魂が抜けたような表情で、空中に視線を這わせていた健太が、こちらに目を向ける。


「ありがとうございます。で、そちらは……」

「三留梓です。あなたが現世でいた頃、私にとって唯一の『味方』となってくれました」


後悔が残る別れなど、したくなかった。

「はあ。しかし、俺は記憶が欠けています」

気まずそうな健太を責める気は、さらさらない。

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