死神の嘲笑
「それでは、帰りますか?」

「帰るって、死神さんは?」

「あなた方に申し忘れたことがありまして、もう一度そちらへ伺います」

拳を、死神は握る。


ぽとり、ぽとりと手の平が赤い涙を流す。

「どうしたんですか?」

「私は『生きている』ことを証明したくて、時々このようなことをするんです。そんな時、不気味な長い爪は便利です」

ずきり、と梓の胸が疼く。

「その気持ち、分かります。血というものは、自分が『生きている』と教えてくれる気がします」

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