死神の嘲笑
五月に入ったばかりの頃だ。


学校帰り、穏やかな風に身体を撫でられ、ぼんやりとしていた梓は、自宅前で転びそうになってしまった。

咄嗟に、地面のコンクリートに手を突く。

両方の手の平に、鈍い痛みが走る。

特に、左のほうがひどい。

鮮やかな赤が、噴き出している。

呆然とその様子を眺めていると、声を掛けられた。

「梓、どうした?」

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