死神の嘲笑
簡単に治療を済ませた健太は、なかなか悪戯を告白しない子ども相手のように、優しく問う。

「その傷痕は、どうした?」


「……『生きている』実感が欲しかった。手首を切ったら、血が出る。それなら、『生きている』って感じることができるでしょ?」

すると、健太は優しく梓の頭を撫でた。

「そうだな。傷痕が梓の『生きている』証だよな」


透明な滴が、瞳からこぼれ落ちる。

手首から流れる、赤い涙とは対照的だった。

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