雨宿りの喫茶店
喫茶、雨宿り
柔らかい空気とメロディ
「ここ、なのかな?」
矢印を追いかけてみると、ツタが壁に絡まっていてお世辞にも綺麗なお店、とは言えない見た目だった。
だけどそこにはどこか上品さを残していて、気を使わずに中に人を誘ってくれる雰囲気が私の足を進ませた。
ぎぃっ。
小さな声を聞きながら扉を開けると、甘くて優しい香りが鼻をくすぐった。
「あら、いらっしゃい」
それと同時に優しい声が私に降って来た。
「あの、良いですか?」
誰も居ない店内。
本当に開いているんだよね?と言う不安に襲われた私は思わず言葉を口に出していた。
するとまた中にいた真っ白な髪をして丸い淵のメガネをかけたおばあさんがこっちを見て優しく笑って頷いた。
「えぇ、もちろん。好きな場所にお座りになってね」
また優しい声が私を包んでくれた。
広いとも言えない店内だけど、木を主に活かした店内は落ち着いた雰囲気で凄く居心地が良く感じた。
「じゃあ…失礼します」
窓際の離れた席に座ろうか、
何て事も考えたけど、何故だかおばあさんの笑顔に吸い込まれるようにカウンターに落ち着いた。