束縛+甘い言葉責め=溜息
部下と妻がデキたなら
長身で年の割に若く見える柏木は、女性客の目当てでもある看板社員なので、昼の部を担当しながらも、夜も少しだけ出ていた。
店が3店舗に増えてから、直がマネージャーということもあり、本店に入ることが少なくなっていた俺は、その日久しぶりに柏木を見たのであった。
物腰が柔らかく、プライベートでも女性にもてそうな柏木だが、年がもう35になる。結婚はしないつもりなんだろうか、もう少し休みをやった方がいいのか、などと少し考えていると、携帯の着信音が聞こえた。
自分のではないが、無意識に場所を探してしまう。
近くにいたバイトのボーイが、近くの棚にあったスマートフォンを、慌ててひっくり返した。
こちらを見ない。あまりにも不審である。
「何?」
「いえ……」
相手は顔を見せない。
「誰のスマホ?」
それにも答えない。
「落し物?」
煮え切らないので、あえて涼しい顔をしたまま、スマートフォンをひっくり返してそのディスプレイを見てやる。
「柏木さんのです……」
消え入りそうな声でバイトが答えた。
頭がカッとなったと同時に、投げ捨てていた。
冷静でいる必要はない。
怒りを止めようとも思わなかった。
ディスプレイには、「吉住 真紀」の文字が流れ、新着メールが来たことを知らせていた。
柏木のことはどうでもよかった。
それよりも、真紀を問い詰めなければ、と思った。
店をそのままに、車に乗り込む。
本店から自宅まではものの5分。焦る気を落ち着かせようともせず、乱暴にハンドルを操作し、すぐに自宅に着いた。
午後10時過ぎたところなので、子供たちはもう寝ている。
真紀は、子供が寝た隙にメールを送ったに違いない。
車を自宅の前に停めると、車庫に入れる時間も惜しんで、キーだけ抜いて自宅に入った。
「真紀」
暗い玄関に自分の声が響く。
寝たふりをするつもりか、真紀は出てこない。
そのまま和室まで歩き、何も気にせず、障子を開けた。
「えっ、何?」
携帯を手に持ったパジャマ姿の真紀が、布団から半分起き上がる。
「ふざけるな!!」
その大声に驚いた三男が泣いて起きた。
辺りは赤ん坊の泣き声で、一気に騒がしくなったがそれも構わず……。