束縛+甘い言葉責め=溜息
真紀の知られざる心情
想いを伝えれば、必ず届く。それに、理解もしてもらえる。
あんなに抵抗していた真紀は、外に少し連れ出してやると、全てを忘れたように甘え、簡単に妊娠をした。
そして更に、子供の数が増えるのと同じように、店の数が増えていく。
4店舗目のマネージャーは当初の予定でもあった、柏木で決定しているので、安心してはいる。
だが、その他の雑用に追われるせいで、ここ数か月は休みがろくにとれていなかった。
真紀も同様、一時保育に預けて、息抜きすることができない。
それでも久しぶりにとれた、ほんの息抜きが畑山と合同になり、それはそれで楽しかったが、真紀に余計な火種を産んでしまったのかもしれなかった。
同い年の独身女性の自由、というものを真の辺りにしたせいで。
あの日から、明らかに真紀は変わった。
今まで関心を持つことを忘れかけていたファッションや化粧に、再び燃え始めた。
家でジーパンを履かなくなり、ワンピースやスカートを着たり、アクセサリーもつけている。
受けた影響の大きさに比例するように、今までの大変という気持ちも忘れて、1人で3人子供を抱えて外に出かけるようにもなった。
ショッピングモールに出かけても、ただ歩くだけで余計大変だろうが、それでも真紀が息抜きできているのなら、何も言わないでおこうと、心を広くしたつもりでそのままにしておいた。
「ここの、ケーキ屋さん。すごく美味しいの」
午前8時の帰宅早々、まさかと思いつつ出して来たのはやはりケーキであった。朝はたいていお茶漬けなど軽い物に決めているが、それを忘れたらしい。
何気にケーキの箱を見る。飲食業界に参入してから早10年近くになり、その種の情報には敏感な吉住は、ここから一時間近くもかかる店が有名であり、しかも、この付近にも新店が出ることを思い出した。
「こんな遠いところまで行ってきたの?」
「だって、どうせ食べるなら、美味しいケーキがいいなと思って」
そんな日もあるだろうと、皿にのせてくれたケーキをただ黙って食べる。
「それでね、それでなんだけどぉ……」
真紀はマニキュアを塗った爪をまっすぐに揃え、おずおずと一枚の紙を出した。
子供の習い事か、あるいは買い物の類だと思いながら、受け取る。
最初に目に入ったのは、募集の文字だった。
パート、募集?
更に、
「これが、保育園の入園手続きの用紙で……」
事務的なプリントも4枚ほど出してきた。
「あのね、そこのケーキ屋がうちの近くにもオープンするの。もうすぐなんだけどね、今建ってる途中。で、ケーキ屋のレジくらいならできるかなと思うの! 私でも。
それでね、保育園は収入に応じてお金が違うからね。それで別に、就労証明とかいらないし」
真紀はこちらを見てはいないが、口元が緩んでとても楽しそうだ。
それに対して、ただ広告から目を逸らすことしかできない。
「そこに、時間帯、曜日は相談可って書いてあるから、だから、面接行って、相談してみようと思うの」
「……どんな?」
吉住はどこも見ずに聞いた。
「週3で、昼間だけってこと……で」
「俺との子供に囲まれて、何が不満なの?」
真紀を睨みつけて言った。
「…………」
怖がっている。のは分かっていたが、やめられなかった。
「外には出さないって言ってるでしょ? 何度も言わせないで」
我慢して、優しく言い聞かせる。
「じゃあ逆に、私が外に出るのどこが不満なの?」
真紀の顔は真剣だ。
「……子供は親と一緒にいた方が安心だよ」
「自分なんかいっこもみないくせに」
あんなに抵抗していた真紀は、外に少し連れ出してやると、全てを忘れたように甘え、簡単に妊娠をした。
そして更に、子供の数が増えるのと同じように、店の数が増えていく。
4店舗目のマネージャーは当初の予定でもあった、柏木で決定しているので、安心してはいる。
だが、その他の雑用に追われるせいで、ここ数か月は休みがろくにとれていなかった。
真紀も同様、一時保育に預けて、息抜きすることができない。
それでも久しぶりにとれた、ほんの息抜きが畑山と合同になり、それはそれで楽しかったが、真紀に余計な火種を産んでしまったのかもしれなかった。
同い年の独身女性の自由、というものを真の辺りにしたせいで。
あの日から、明らかに真紀は変わった。
今まで関心を持つことを忘れかけていたファッションや化粧に、再び燃え始めた。
家でジーパンを履かなくなり、ワンピースやスカートを着たり、アクセサリーもつけている。
受けた影響の大きさに比例するように、今までの大変という気持ちも忘れて、1人で3人子供を抱えて外に出かけるようにもなった。
ショッピングモールに出かけても、ただ歩くだけで余計大変だろうが、それでも真紀が息抜きできているのなら、何も言わないでおこうと、心を広くしたつもりでそのままにしておいた。
「ここの、ケーキ屋さん。すごく美味しいの」
午前8時の帰宅早々、まさかと思いつつ出して来たのはやはりケーキであった。朝はたいていお茶漬けなど軽い物に決めているが、それを忘れたらしい。
何気にケーキの箱を見る。飲食業界に参入してから早10年近くになり、その種の情報には敏感な吉住は、ここから一時間近くもかかる店が有名であり、しかも、この付近にも新店が出ることを思い出した。
「こんな遠いところまで行ってきたの?」
「だって、どうせ食べるなら、美味しいケーキがいいなと思って」
そんな日もあるだろうと、皿にのせてくれたケーキをただ黙って食べる。
「それでね、それでなんだけどぉ……」
真紀はマニキュアを塗った爪をまっすぐに揃え、おずおずと一枚の紙を出した。
子供の習い事か、あるいは買い物の類だと思いながら、受け取る。
最初に目に入ったのは、募集の文字だった。
パート、募集?
更に、
「これが、保育園の入園手続きの用紙で……」
事務的なプリントも4枚ほど出してきた。
「あのね、そこのケーキ屋がうちの近くにもオープンするの。もうすぐなんだけどね、今建ってる途中。で、ケーキ屋のレジくらいならできるかなと思うの! 私でも。
それでね、保育園は収入に応じてお金が違うからね。それで別に、就労証明とかいらないし」
真紀はこちらを見てはいないが、口元が緩んでとても楽しそうだ。
それに対して、ただ広告から目を逸らすことしかできない。
「そこに、時間帯、曜日は相談可って書いてあるから、だから、面接行って、相談してみようと思うの」
「……どんな?」
吉住はどこも見ずに聞いた。
「週3で、昼間だけってこと……で」
「俺との子供に囲まれて、何が不満なの?」
真紀を睨みつけて言った。
「…………」
怖がっている。のは分かっていたが、やめられなかった。
「外には出さないって言ってるでしょ? 何度も言わせないで」
我慢して、優しく言い聞かせる。
「じゃあ逆に、私が外に出るのどこが不満なの?」
真紀の顔は真剣だ。
「……子供は親と一緒にいた方が安心だよ」
「自分なんかいっこもみないくせに」