束縛+甘い言葉責め=溜息
畑山は珍しく強気で言った。
「奥さんでも、そういう風にお前の物じゃないよ」
「私もう絶対子供は作らないから」
辺りが静寂に包まれる。
「それは僕が決める」
「修三」
私は唇を噛んで、立ち上がった。
「どこ行くの!?」
吉住の言葉を背に、玄関へ向かう。
「修三、もっと心を広く持たないと。真紀さん傷ついてるよ。病院で薬もらった件、聞いたけど、どんな思いで行ったかよく考えた方がいい」
靴を履いている途中、そんな声が聞こえた。
だが、すぐに吉住は姿を現し、畑山の話など聞いてはいない。
「どこ行くの?」
「どっか」
私は玄関のドアを開けて外へ出た。
「待って」
靴も履かずに、吉住はドアを開け、外で腕をつかむ。
「離して!」
私は腕を振り払おうと力を込めた。
「離して……、離してよ……」
だが、腕は離してもらえない。
「ちょっと息抜きさせてあげよう」
後から来た畑山が、話をきちんと進めてくれる。
「離しませんよ。僕の妻ですから」
「それ、何か勘違いしてるんじゃない? お前の物ってわけじゃないよ」
「離して……、痛い……」
突然の電子音に全員が停止した。
「店からじゃないの?」
畑山の予想通り、店からの着信音だ。
だが吉住は無視して言う。
「5人目、僕は諦めてないから」
聞いた途端、私は腕を強く振った。
だが、吉住の手は外れない。
「修三、落ち着け」
畑山の忠告を無視して手に力を込める吉住が、悲しくて仕方なくなった。
「離婚したい」
その気持ちを離婚とよぶのかどうか分からなかったが、そう言わなければ伝わらない気がして、発した。
突然、腕が軽くなる。
その表情を見る勇気はなかったが、吉住はショックを受けたようだった。
「一方的なんだよ、お前は。妊娠させて、家の中に閉じ込めようなんて。それじゃあ真紀さんに嫌われても仕方ないよ」
「俺はただ心配なだけなんです。
こんなに、若くて、綺麗な真紀さんが……」
「お前だって一緒じゃない。ホールの女の子に言い寄られて断ってるの」
吉住は畑山を睨んだ。
「それと同じことが真紀さんに起こらないとは限らないと思ってるんです」
「あるかもしれない。けど、お前だって現にちゃんと断ってるじゃないか。そういうものだよ」
「…………」
吉住は俯いた。
「そんなこともあるんだね……」
あったとしても、断ると信じていた自分は正しかったのだと、私は逆に安心した。
「私は心配じゃないよ。断るの分かってるから。
今日は仕事だって出て行って、女の子と遊ぶなんて、そういうことはしない人だとちゃんと分かってるから」
ゆっくり、言い聞かせるように言う。
「真紀さんの方がちゃんと大人だよ。修三よりずっと」
吉住は、何か言い返してくるかなと思ったら、そのまま両腕を伸ばし、抱きしめてきた。
「直が言うには、今のそのホールの女の子は仕事がすごくできるんだけど、たまに誘ってくるんだってさ」
「先輩、もういいじゃないですか」
吉住は、本気で畑山に怒りを向けた。
「へえ。そうなの。モテないわけないとは思ってたけどね。例えば、お客さんから、「オーナーだってー」みたいな感じで騒がれたりしてるのかなとは思ってた」
「それに近い」
畑山は間髪入れずに答えた。
「けど浮気だとは思ってなかったでしょ?」
更に私に尋ねる。
「それは、だから、相手の気持ちはどうか知らないけど、修ちゃんの気持ちさえ変わらなかったらいいと思ってるから。相手の気持ちまではね、どうすることもできないし」
「肩の荷が下りたでしょ。自分棚上げにして、真紀さん攻めてること」
畑山は笑いながら、明るい声を出した。
「別に僕は隠してたわけじゃありません」
「嘘ぉ」
畑山と私は同時に発して笑った。
吉住はようやく腕を緩めてくれる。
「少しずつ、自分の考えを真紀さんに合わせていかないといけないのかもしれません」
「そうだよ! 少しずつじゃなくて、今すぐ」
「けど、5人目とこれとは別だよ」
「奥さんでも、そういう風にお前の物じゃないよ」
「私もう絶対子供は作らないから」
辺りが静寂に包まれる。
「それは僕が決める」
「修三」
私は唇を噛んで、立ち上がった。
「どこ行くの!?」
吉住の言葉を背に、玄関へ向かう。
「修三、もっと心を広く持たないと。真紀さん傷ついてるよ。病院で薬もらった件、聞いたけど、どんな思いで行ったかよく考えた方がいい」
靴を履いている途中、そんな声が聞こえた。
だが、すぐに吉住は姿を現し、畑山の話など聞いてはいない。
「どこ行くの?」
「どっか」
私は玄関のドアを開けて外へ出た。
「待って」
靴も履かずに、吉住はドアを開け、外で腕をつかむ。
「離して!」
私は腕を振り払おうと力を込めた。
「離して……、離してよ……」
だが、腕は離してもらえない。
「ちょっと息抜きさせてあげよう」
後から来た畑山が、話をきちんと進めてくれる。
「離しませんよ。僕の妻ですから」
「それ、何か勘違いしてるんじゃない? お前の物ってわけじゃないよ」
「離して……、痛い……」
突然の電子音に全員が停止した。
「店からじゃないの?」
畑山の予想通り、店からの着信音だ。
だが吉住は無視して言う。
「5人目、僕は諦めてないから」
聞いた途端、私は腕を強く振った。
だが、吉住の手は外れない。
「修三、落ち着け」
畑山の忠告を無視して手に力を込める吉住が、悲しくて仕方なくなった。
「離婚したい」
その気持ちを離婚とよぶのかどうか分からなかったが、そう言わなければ伝わらない気がして、発した。
突然、腕が軽くなる。
その表情を見る勇気はなかったが、吉住はショックを受けたようだった。
「一方的なんだよ、お前は。妊娠させて、家の中に閉じ込めようなんて。それじゃあ真紀さんに嫌われても仕方ないよ」
「俺はただ心配なだけなんです。
こんなに、若くて、綺麗な真紀さんが……」
「お前だって一緒じゃない。ホールの女の子に言い寄られて断ってるの」
吉住は畑山を睨んだ。
「それと同じことが真紀さんに起こらないとは限らないと思ってるんです」
「あるかもしれない。けど、お前だって現にちゃんと断ってるじゃないか。そういうものだよ」
「…………」
吉住は俯いた。
「そんなこともあるんだね……」
あったとしても、断ると信じていた自分は正しかったのだと、私は逆に安心した。
「私は心配じゃないよ。断るの分かってるから。
今日は仕事だって出て行って、女の子と遊ぶなんて、そういうことはしない人だとちゃんと分かってるから」
ゆっくり、言い聞かせるように言う。
「真紀さんの方がちゃんと大人だよ。修三よりずっと」
吉住は、何か言い返してくるかなと思ったら、そのまま両腕を伸ばし、抱きしめてきた。
「直が言うには、今のそのホールの女の子は仕事がすごくできるんだけど、たまに誘ってくるんだってさ」
「先輩、もういいじゃないですか」
吉住は、本気で畑山に怒りを向けた。
「へえ。そうなの。モテないわけないとは思ってたけどね。例えば、お客さんから、「オーナーだってー」みたいな感じで騒がれたりしてるのかなとは思ってた」
「それに近い」
畑山は間髪入れずに答えた。
「けど浮気だとは思ってなかったでしょ?」
更に私に尋ねる。
「それは、だから、相手の気持ちはどうか知らないけど、修ちゃんの気持ちさえ変わらなかったらいいと思ってるから。相手の気持ちまではね、どうすることもできないし」
「肩の荷が下りたでしょ。自分棚上げにして、真紀さん攻めてること」
畑山は笑いながら、明るい声を出した。
「別に僕は隠してたわけじゃありません」
「嘘ぉ」
畑山と私は同時に発して笑った。
吉住はようやく腕を緩めてくれる。
「少しずつ、自分の考えを真紀さんに合わせていかないといけないのかもしれません」
「そうだよ! 少しずつじゃなくて、今すぐ」
「けど、5人目とこれとは別だよ」